Bell麻痺とHunt症候群はできるだけ早く見極める必要があります。その一つ目の理由は、Bell麻痺とHunt症候群では改善する確率が大きく異ること。二つ目の理由は、より重症なHunt症候群では、治療開始日が数日遅くなると明らかに治癒率が低下することが分かっているからです。

ステロイド療法による治癒率

2つの病気の自然経過ついては、治癒率が「Bell麻痺>>Hunt症候群」と大きく異ることは上のセクションで既に書きました。ではステロイドによる治療を行った場合の治癒率はどうかというと、

Bell麻痺のステロイド療法による治癒率・・・90%前後
Hunt症候群のステロイド療法による治癒率・・・50~80%

となっています。Hunt症候群は報告によって大きな差があるようですが、間を取って65%前後としても、Bell麻痺の90%に比べて明らか劣ります。

Hunt症候群の治療開始日と治癒率

また、Hunt症候群では、発症から治療開始までの日数の違いにより治癒率が大きく異なることが分かっています。この場合の治療方法は、ステロイドと抗ウイルス剤の併用療法です。

3日以内に治療開始・・・治癒率75%
4~7日目に治療開始・・・48%
8日以降・・・30%


以上のように、
①Bell麻痺とHunt症候群では治癒率が異なります。
さらに、
②Hunt症候群の場合は治療開始時期が遅れると治癒率が日毎に低下します。

したがって、顔面神経麻痺は早期に見分けることが重要であり、そのためにはできるだけ早い病院受診が必要です。

Bell麻痺とHunt症候群を見分ける方法

難聴、耳鳴り、めまいを生じる場合は、Hunt症候群であることが多いです。また、耳周囲の皮膚や口の中の粘膜に、帯状疱疹を生じるのもHunt症候群の特徴です。治癒率が低いHunt症候群を見分けるには、顔面神経麻痺の症状以外に特徴的な症状を合併しているかどうかがポイントになります。

隠れHunt症候群

これらの特徴的な症状が幾つか欠けている「不全型Hunt症候群」というタイプがあります。同じ病気であっても必ずしも同じ症状を表すわけではないのです。さらに、不全型Hunt症候群の中には、顔面神経麻痺以外の症状を一切伴わないもの、つまり症状の上ではBell麻痺とまったく同じものがあります。

Hunt症候群と同じVZV(水痘帯状疱疹ウイルス)による顔面神経麻痺であるにもかかわらず、Hunt症候群の特徴的な症状である難聴・耳鳴り・めまい・耳や口内の帯状疱疹を全て欠き、顔面神経麻痺のみの症状しか表さない隠れHunt症候群を「ZSH(無疱疹帯状疱疹)」と言います。

以前から、Bell麻痺の中に重症で後遺症を残しやすいケースが一定割合含まれることが認識されていたようですが、正体はHunt症候群であったということです。Bell麻痺と診断される症例の1割弱~2割弱程度がZSH(無疱疹帯状疱疹)と報告されていますので、結構多い割合です。

【参考文献】
日本顔面神経研究会 編.顔面神経麻痺診療の手引-Bell麻痺とHunt症候群-.金原出版

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