私が研修等でたいへんお世話になっている一寸法師鍼治療院の中沢先生がブログで紹介された症例について、治療を担当した私の方から報告させていただきます。

今回の症例では、風邪の後で頸肩部痛と上肢挙上障害がおこり、Neuralgic Amyotrophyと推察して、鍼治療をおこないました。

患者さんは、20歳代の男性で、左頚肩部~上肢のシビレを訴えていました。
2日前からカゼにより咽頭痛、嗄声、発熱(昨日は37.3℃)に加えて、左頸肩部の痛みがあります。

昨日に比べて風邪の症状がだいぶ落ち着いてきましたが、むしろ左頸肩部~上肢の痛みはひどくなってきているようです。
じっとしていても左頸肩部を中心に左上肢全体にシビレ感があります。
首の運動(左則屈、後屈)により左頸肩部~左上肢全体に痛みが生じます。左上肢は挙上できません。

診察すると、
患側(左)の握力が少し弱く、頚の運動により左肩~上肢の症状が再現します。
また左腕を挙げても同じように症状再現があります。自動運動では110°~120°程度しか挙上できませんが、他動運動では健側とほとんど同じ高さまで上がります。
胸郭出口症候群の際に診断材料(確定診断にはなりませんが)になるモーリーテストは陰性でしたが、テストで圧迫した左側頚部の圧痛は著明でした。

その他の所見は、
左側頚部の腫脹陽性、扁桃腺の発赤陽性(左)
筋萎縮陰性、触覚障害陰性、上肢腱反射正常

神経根症、五十肩、腱板障害、胸郭出口症候群など様々な疾患の特徴が混在しており、
判断に迷うところですが、カゼの症状が先行していることなどから、Neuralgic Amyotrophyだと推察しました。

Neuralgic Amyotrophyとは、
「Neuralgic Amyotrophyは、肩周辺の疼痛と上腕神経叢支配筋の弛緩性麻痺を呈する原因不明の疾患」
「病因はウイルスによる上腕神経叢の神経炎が疑われている」
「前駆症状として感冒用症状がみられることがあり、感冒流行時期に発生することが多いのも特徴」
「疼痛は激烈で通常の根性疼痛より強い。」
「患側側の上腕神経叢に圧痛を認める。」
などとあります。

痛みの程度が文献に記載されているほど強くなかったのは、今回の症例が軽症例だったためと思われます。他は今回の症例と重なり、Neuralgic Amyotrophyと判断しました。

治療では、
喉周囲の血液循環を良くするために、足三里と太谿のツボを使いました。
これは嚥下を改善するという研究報告がある経穴の組合せです。
嚥下を改善するのは、喉周囲にある筋肉の血液循環改善を促すことで、嚥下に関係する喉まわりの筋肉がほぐれ、嚥下がスムーズにできるのでしょう。

今回の症例では、カゼによる喉周辺の炎症により腕神経叢が圧迫されているか、または炎症が腕神経叢にまで広がっているのではないかと推測し、喉周囲をほぐすことで、喉周囲のリンパ腺、神経の回復を促そうと考えました。

他に胸鎖乳突筋も左右を比べて患側である左側が強く張っていたため、胸鎖乳突筋も治療点として使いました。
その後うつぶせで、後頚部のC5神経根付近や、肩甲骨まわりをほぐしました。

同様の治療をその日のうちに2回おこないました。次の治療では、喉の腫れは引いて、首・肩・上肢の症状もおさまっており、上肢の挙上障害も改善されました。

参考文献によると、Neuralgic Amyotrophyについて「予後は比較的良好で、数ヶ月から1年で回復することが多い」とあり、典型的なマヒによる挙上障害の写真が掲載されていました。今回の症例は、文献の症例に比べると非常に軽度だったと考えられますが、治療効果が大きく鍼灸の適応の広さを感じました。

 

参考文献:(後ほど追記します、、、)