ギックリ腰・急性腰痛でやって良いこと悪いこと
はりきゅう今泉治療院 院長の今泉洋平です。
このページは、
「ギックリ腰になったけど、どう過ごしたら早く良くなる?」
「急な腰痛で、悪化を防ぐために何をしたらダメなの?」
というように、急性の腰痛を起こして、やって良いこと・悪いことを知りたい方に向けた記事です。
日本整形外科学会と日本腰痛学会が監修している「腰痛診療ガイドライン2019」や、はりきゅう今泉治療院における針灸治療15年間の経験に基づいて、アドバイスします。
「絶対に○○するべき」という情報ではありませんが、参考にしてご自身に合うようなら、取り入れてみてください。
「腰痛診療ガイドライン2019」について
医師が腰痛を診療する際のガイドラインです。膨大な統計データに基づいて、正確な情報が提供されています。急性腰痛のとき「自分でやっていいこと・やらない方がいいこと」にも有用と考えて、参考にしました。
急な腰痛は、安静にした方がいい?
安静にするよりも、活動を維持した方が良い
急性腰痛では、安静にするよりも活動を維持した方が、早く良くなるという統計データがあります。腰痛診療ガイドラインでは、統計データをもとに「急性腰痛に対して活動を維持することを推奨する」としています。
ただし、「痛みを我慢して無理に活動する」というのはおすすめしません。強い苦痛が生じない程度にとどめた方が良いでしょう。
急な腰痛のとき、お風呂に入っていい?
入浴は、急性腰痛にメリットがありそうだが、注意も必要
急性腰痛に入浴が良いのか、腰痛診療ガイドラインや統計データには情報がありません。
Web上では、「お風呂に入ることで血行促進や筋緊張緩和で症状緩和が期待できる」と、整形外科医などの専門家が入浴を推奨する情報があります。
私の方からは、入浴時の注意点についてお伝えしておきます。
入浴の注意
急性腰痛時は、湯舟に入った時の姿勢や、お湯の浮力で体の力が加わり、痛みを強く感じる可能性もあります。
湯舟に入って痛みを感じたときは湯舟から上がる、入浴後に痛みが強くなる場合は翌日シャワーにするなど、ご注意ください。
また、湯舟に入っているときの股関節を体育座りのように曲げる姿勢は、急性腰痛の痛みを悪化させる場合があります。長時間続けない方がいいでしょう。
ちなみに、私は急性腰痛のとき、正座して湯舟に入ったことがあります。「おすすめ」というわけではありませんが、痛みを感じずに入れる方法の参考になれば。
急な腰痛では、痛み止めなどの薬を飲んだ方がいい?
腰痛診療ガイドラインでは、急性腰痛に対する効果の統計データに基づいて、各種の薬を推奨しています。医療機関や薬局で、医師・薬剤師の指示に従って使用してください。
鍼灸師の立場では、薬について具体的にアドバイスできることはありません。
私自身の腰痛の経験では、処方された消炎鎮痛薬を服用したとき、動いたときの瞬間的なズキっという痛みはほとんど変わりませんでしたが、動かなくても感じるズーンという重い痛みは、多少軽減されました(個人の感想です)。
急な腰痛のとき、椅子の高さ、背もたれの角度は?
椅子については、ガイドラインにも統計データにも情報がありません。私が腰痛の方を長年みてきた経験と、自分自身の腰痛の経験から、アドバイスします。
座面の高さ
標準的な椅子の座面高は概ね40~45cm(細かく言うと、42±1cmがほとんど)です。これより低い椅子は腰痛の負担になりやすいと考えています。
ソファーは、座面が低いことが多いので、注意してください。低い椅子は、腰の痛みが強くなりやすく、立つ・座るという動作も行いにくいです。
仕事で使うオフィスチェアは、高さを調節できるタイプが多いです。楽な高さに調整するのが良いでしょう。身長が高い人は、適切な座面高が高めですので、注意してください。
座面の硬さ
一般に、座面の硬さは柔らかいより硬い方が腰痛の負担になりにくいです。「柔らかい=クッション性が高い=負担が軽い」と考えがちですが、硬い方が楽な場合が多いです。
背もたれ
背もたれは、健康な人なら人間工学的に適切な背もたれの角度が分かっています。しかし、腰痛の場合は、人によって、腰痛によって異なります。
「腰痛に背もたれは使っちゃダメ」とか「腰痛は背もたれを使った方がいい」など決まっていません。試してみて、適宜選択してください。
角度が可動式の背もたれも、「腰痛に良い角度」というのは決まっていません。試してみて楽な角度が見つかれば、その角度で利用してください。
急な腰痛のとき、夜寝る姿勢は?
ガイドラインや統計で、寝るときに良い姿勢の情報はありません。鍼灸師としての経験からアドバイスすると、急性腰痛の場合、一般に「痛い方が上になる横向き寝」が楽です。
急な腰痛は冷やした方がいい?
急性腰痛は冷やさないことをおすすめします
ガイドラインや統計では「急性腰痛は冷やした方が良い」という情報はありません。
スポーツの応急処置はかつて「RICE」という方法が推奨され、冷却が効果的と考えられていました。※RICEのIは、Icing(冷却)
最近は「PEACE」という方法に置き換わり、冷却を行わないことが推奨されています。急性腰痛もスポーツの応急処置と同じように考えて「冷却は行わない」という方針で良いでしょう。
個人的な経験では、冷やして周囲の筋肉が固まり、動かすときに余計に痛くなったことがあります。
ウェブ上では「急性腰痛の発症直後は冷やす」という情報もありますが、様々な情報源から総合的に考えて「急性腰痛を冷やすのはあまり良くない」と考えています。
なお、「冷やさない方がよいということは、温めた方がいいんですよね?」と発想する人もいらっしゃいますが、特に温めるメリットの情報もないので、温めなくていいでしょう。
急な腰痛には、コルセット・サポーターを装着した方がいい?
コルセット・サポーターによる大きな治療効果は期待できません。動くときの助けにはなりそうです。
ガイドラインでは、治療としてのコルセットは「弱く推奨する」です。大きな治療効果はあまり期待できないようです。
しかし、「痛みがあるけど、仕事をしなければならない」という場合は、コルセットを使うことで動いた時の痛みが軽減されたり、力が入りやすかったりというメリットがありそうです。
「コルセットを装着すれば無理な動きも平気」ということはありませんので、ご注意ください。
急な腰痛は、体を動かした方が早く良くなる?
ストレッチやエクササイズで積極的に動かすのは控えた方がいいです
ガイドラインでは、慢性腰痛に対する運動療法が有効という統計データから、運動療法を推奨しています。
しかし、急性腰痛に対する運動療法は、統計データが不十分で推奨していません。
多くの腰痛を施術してきた中で、「腰痛を緩和するためにストレッチをしたら悪化して、自力で動けなくなった」という方を往診したことがあります(※当院は現在往診しません)。
私も過去に「ここが伸びたら治りそう」とストレッチをして、腰痛がひどくなったことが何度かあります。
急性腰痛の時は、ストレッチやエクササイズで改善しようとするのは危険です。
注意)慢性腰痛の人の腰痛が急に酷くなったら、それは「急性腰痛」です。この場合も積極的に動かさない方がいいです。
このページでは、急性の腰痛を起こして、やって良いこと・悪いことを知りたい方に向けた内容をお伝えしました。
急性腰痛を悪化させずに、早く改善させるために、参考にしてお過ごしください。
なお、腰痛に対する針灸治療は、下記ページをご覧ください。