鍼灸を受けたことのない人向けに、鍼の刺し方について解説します。
はじめて治療を受ける方にとっては、ありとあらゆることが不安要素のようですね。
予備知識として知っていただき、少しでも安心して治療を受けてもらえたらいいなと思います。
Contents
皮膚を通過させる際の刺し方の違い
体に鍼を刺す際に、まず体の一番表面の皮膚を貫きます。
この段階で2種類の方法があります。
管状の鞘を使う管鍼法
皮膚を通過させる際の方法で代表的なのが管鍼法です。「かんしんほう」と読みます。
管鍼法では、鍼よりも数ミリ短い管を使います。
管に鍼を入れた状態で皮膚の上に立てると、鍼の長さが余るので、鍼の頭が少し上に出ます。
鍼の飛び出している部分を数回叩いて皮膚を貫通させます。
両手がふさがって写真が撮れないので、本から写真をお借りします。

尾崎昭弘:図解 鍼灸臨床手技マニュアル.医歯薬出版,p.44
鍼は皮膚を一瞬にして貫通するので、ほとんど痛みを感じません。しかも、簡単ですばやく刺すことができます。
患者さんに痛みを与えにくい上に、我々鍼灸師も簡単に手早く治療を行える方法です。現在多くの鍼灸師がこの方法でおこなっています。
鍼治療の長い歴史の中で、管鍼法の開発は素晴らしいイノベーションだったと感じます。
ちなみに、管鍼法はメイドインジャパンです。
杉山和一という江戸時代の鍼灸師が開発しました。杉山和一は世界初の視覚障害者教育施設を作った人物としても有名です。
鍼管を使わない方法
鍼管を使わずに皮膚を貫く方法もあります。
撚鍼法と書いて「ねんしんほう」と読みます。
手順は図をご覧下さい。

東洋療法学校協会編:はりきゅう実技<基礎編>,医道の日本社,p.18,1992
鍼管を使わないので、管鍼法に比べて技術的に難しく、この方法を行う鍼灸師は管鍼法に比べて少ないです。
皮膚に鍼を刺した後の方法
上では鍼を皮膚に刺す方法について書きました。
次は鍼を刺したあとの方法を解説します。
鍼を刺して抜いてを繰り返す
鍼を刺して目的の深さまで進めたら、すぐに抜く方法を単刺といいます。
単刺を行う場合は、1ヶ所でなく続けて何ヶ所も行うことが多いです。
鍼を動かして刺激を与える
鍼を刺した後、目的の深さで鍼を小刻みに行ったり来たりさせたり、回旋させるなどして刺激を与える方法があります。
鍼の動かし方によって、雀啄術、間歇術など、様々な名前がついています。
特に中医学という考え方では、体の状態に応じて、鍼の動かし方に細かい目的が定められ、焼山火、透天涼などの難しい名前が付けられています。
しばらく鍼を刺したままにしておく
鍼を刺して目的の深さまで進めたら、そのままの状態で鍼を動かさずにしばらく放っておく方法を置鍼といいます。置鍼は「ちしん」と読みます。
鍼は刺しておくだけでも一定の刺激になり、体に種々の反応が生じます。
1回あたり10分~15分程度の置鍼が多いです。
鍼に通電する
置鍼した鍼に通電を行なう場合もあります。
通電では専用の機械を使います。
鍼通電では痛みを生じるような強い電気は流しません。基本的にトントントンと感じる程度の弱い刺激です。
電気刺激の周波数などを変えることで、体に起こる反応が変わることが分かっており、様々なデータがあります。
そういった科学的なデータを参照して治療を行う場合もあります。