鍼灸の「灸」のお話です。鍼灸を受けた経験のない人向けの情報です。
最近の鍼灸院は、灸を治療で行うことは非常に少なくなっています。
灸は、物としても方法としても、希なものが多くなっていますが、それらも含めてご説明します。
モグサの原材料は?|誰もが知っているあの植物
灸を行う際には「艾」という材料を使います。艾は「もぐさ」と読みます。
さて、艾は何から作られているか知っていますか?
艾はヨモギからできています。蓬を乾燥させて、様々な加工を経て艾になります。
艾は、お灸の使い方によって、いくつもの等級にわけられています。
最も等級が高い艾は、葉っぱなどの邪魔な部分は取り除いてあり、
このような姿をしています。
これは、ヨモギのどこの部位でできているかご存知でしょうか?
ヨモギの葉っぱには、裏側に細かい毛のようなものが生えていますが、その毛だけを集めたのが写真の艾です。
艾を皮膚の上で燃やす方法|今はほとんどやらないので、怖がらないで
お灸を皮膚の上に直接置いて使う方法についてご説明します。
透熱灸
我々鍼灸師にとって、お灸の使い方の最も基本的な方法は、艾を皮膚に置いて火をつける「透熱灸」です。
透熱灸用の艾は、余分なものを取り除いてあり、火をつけたときの火力は弱いです。
艾を指先で数ミリ大の円錐形に整え、皮膚の上に乗せて先端に火を付けます。
透熱灸は通常、火をつけたらそのまま燃え尽きるのを待つのですが、火傷しやすいので、現在はあまりこの方法は行われていません。
八分灸|熱さを緩和するお灸のやり方
では、どうしているのかというと、途中で指で押しつぶして火を消します。円錐状の8分目くらいで消すので「八分灸」といいます。
八分灸の場合は、一瞬だけ「チッ」という感じの熱さを感じます。火傷にはなりません。
このお灸を受ける患者さんは「一瞬ピリッとしますね」という感じです。
「熱い~、怖い~」と騒ぐようなものではありません。
灸熱緩和紙|アルミ箔で熱さを緩和する
または、灸熱緩和紙というアルミ箔でできたシールを皮膚と艾の間に挟んだ状態でお灸を行います。
これを使うと灸の熱が周りに分散されて、熱さが緩和され火傷も生じません。
艾が台座などの上に乗っているタイプ
艾が台座に乗っているタイプのお灸についてご説明します。
お灸と皮膚の間を、物で隔てるので「隔物灸」といいます。
温筒灸|一般の方にもポピュラー
隔物灸で一番ポピュラーなものが写真のタイプです。
一般の方にとってお灸と言えば、これかもしれませんね。
商品としては「せんねん灸」が最も有名ですが、同じタイプの製品が他社からも販売されています。
台座の上に艾が乗っていて、台座の下はシール面になっています。
火を付けてシールを剥がし、皮膚に乗せて使います。シールで皮膚に付着するので、落ちる心配もありません。
写真のタイプは、円盤状の台座に艾が載っているように見えますが、実は台座の中心部に穴が空いていて、艾が燃えた際の輻射熱が皮膚に伝わります。
灸の火力はいくつか種類があり、一番弱いものであればほとんど火傷の心配もありません。
生姜灸|昔家庭で行ったお灸はこれ
スライスした生姜に艾を載せて使う「生姜灸」という方法があります。
昔、家庭でお灸を行っていた時代は、生姜灸のような方法が行われていたらしいです。
他にも、ニンニクを使う「ニンニク灸」、味噌を使う「味噌灸」など、様々な方法があります。
食品を使うと、焦げた良い匂いがしてきます。
その他の灸
棒灸|気持ちいいけど、煙が多いのであまり行われない
棒灸は、艾を固く棒状にして周囲を紙で巻いたものです。
先端に火を付けて、皮膚から数センチ程度に近づけて使います。
輻射熱でたいへん気持ちいいですが、煙が多く出るので、これを使う治療院は少ないです。
灸頭鍼|気持ちいい治療だが、煙が多いので廃れつつある
灸頭針は、刺した鍼の頭にお灸を載せる方法です。
鍼に載せる艾は、予め灸頭針用として適度な大きさにまとめてある製品や、専用の金具を使って載せるものなど様々です。
私の個人的な好みでは、上でご紹介した棒灸をカッターナイフで2センチ長くらいに切って使う灸頭針です。火力が強くて超気持ちいいです。
一見、お灸の熱が鍼を伝わりそうに見えますが、鍼が細いので伝導熱は皮膚までは届きません。
皮膚に伝わるのは、お灸の輻射熱です。
灸頭針も煙が多いので、あまり出番はありません。当院では逆子治療のときだけ使います。
電気を熱源としたお灸|煙がなく使いやすい。多くの鍼灸院が行う方法。
火を使わずに、電気を熱源にしているお灸もあります。
煙がでない、温度が安定している、後始末が不要など、非常に便利です。
多くの鍼灸院で使われています。