


ハリ治療を受けたことのない方は、「なんとなく危なそう・・・」という漠然とした不安で、ハリ治療を敬遠している場合も多いと思います。
そういう不安を少しでも取り除けるように、このページでは、
- ハリ治療で使う針の安全性
- ハリ治療の技術的な安全性
- ハリ治療の副作用
という3つの観点から、ハリ治療の安全性について考えていきます。

はり治療で使う針の安全性
ココがポイント
- 鍼灸の針は、薬機法という法律に基づく医療機器です。
- 現在つかわれている針は、ほとんどが使い捨てです。
- 注射針や採血針と同等の水準で管理されています。
はり治療で使う針は「医療機器」です。
「医療機器」は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法、旧薬事法)で定められています。
また、現在ハリ治療で使う針は、ほとんどがディスポーザブル(使い捨て)です。
ディスポーザブル(使い捨て)のハリ治療の針は、医療機器の「クラスⅡ(管理医療機器)」に入ります。
同じクラスⅡには、注射針や採血針がありますので、はり治療の針は、注射針や採血針と同じ水準で管理・規制されていることになります。
日本のはり治療用針を製造販売しているセイリン株式会社のウェブサイトや、針のパッケージ(下の写真を参照)を見ると、安全性と衛生面で適切に管理された製品であることがよくわかります。

尾崎昭弘(2003)『図解 鍼灸臨床手技マニュアル』医歯薬出版
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はり治療の技術的な安全性
ココがポイント
- 鍼灸師は国家資格です。
- 免許を取るために専門学校や大学に通い、安全に治療するための知識・技術を身につけています。
鍼治療と灸治療は、それぞれ「はり師免許」「きゅう師免許」の国家資格を持つ者に認められた治療法です。
資格取得のための専門学校や大学では、安全な鍼灸治療を行うための知識を学び、実技訓練を行います。
鍼灸師(はり師、きゅう師の免許を持つ者)は、以下の内容を身につけています。
- 適切に、施術環境、器具、作業法保、手順などを整えて、治療による感染を防止すること
- 患者さんの状態をみて、鍼灸を行うことが適しているかどうかを判断すること
- 医療過誤(医療ミス)や副作用を予防する施術方法、および医療過誤や副作用が発生したときの対応方法
鍼灸師は、個人が勝手に編み出した独自の手法で、治療を行っているのではありません。
国が法律で定めている学校に通って、国家試験を経て資格を取得しています。
鍼灸師は、国がお墨付きを与えた知識や技術を持っている有資格者ですので、技術的な安全を十分に備えています。
副作用|ドイツの大規模調査から
ココがポイント
ドイツで行われた大規模な調査では、約50万人の患者さんに対して400万回をこえる鍼灸治療が行われ「鍼治療は安全で重大な有害事象はまれである」と結論付けられています。
副作用の発生頻度を示したドイツの大規模調査を紹介します。
2001年から2003年の間に、ドイツで医師9,918名により行われた約50万人の患者に対する400万回を超える治療において、副作用の報告をまとめたものです。
この種の調査は、規模が大きくなるほど出された結論の信頼性が高まります。現時点では、このドイツの調査が数の上では最も信頼性の高い調査です。
画像は、全日本鍼灸学会のシンポジウムで発表された内容です。(クリックすると、大きなサイズで開きます。)
矢野忠(2006)「JSAM国際シンポジウム大盛況のうちに終わる!」,『全日本鍼灸学会雑誌』57(2),全日本鍼灸学会
結果として、鍼治療は安全で重大な有害事象はまれである、と結論づけられています。
まとめ
- ハリ治療で使う針は、薬機法に基づいて、注射針や採血針と同じ水準で管理されており、道具の安全性は十分に確保されています。
- 鍼灸師の技術は、法律(はり師・きゅう師)に基づいて、安全な治療を行うための教育を受け、国家試験を合格したものが治療を認められていることから、技術的な安全性が十分確保されています。
- 副作用については、現時点で最も信頼性の高いドイツの大規模調査によると、鍼灸は安全で重大な有害事象はまれであると報告されています。
はり治療に対して、漠然な不安を感じている方でも、「道具」「技術」「副作用」の面については、一定の安全性が確保された治療法だと分かっていただけたと思います。